現在はキーボードの構造というと安価で購入できるメンブレン(カバーカップ)式、高級キーボードに採用されているメカニカルキーボード、静電容量無接点方式などがあります。
しかし、過去のキーボード黎明期にはこれ以外にもたくさんのスイッチが模索されていました。
そんな中で1980年代にはかつてIBMというパソコン販売で栄華を誇った企業があり、その企業が1999年までmodel Mというキーボードが発売されていました。
そのキーボードにはバックリングスプリング式という構造が採用されており、官能的な打鍵感によって今でもコアなファンがいる構造です。
そして、そんな構造に関する知的財産権やmodel Mの金型を買い取って、現在もmodel Mと同じようなバックリングスプリング式キーボードを作り続けているUnicompというメーカーがあります。
日本では有名ではありませんしサイトも英語ですが、一応日本語配列も選べます。
ということで今回はバックリングスプリング式を新品で購入できるUnicomp製のUltraClassic106(日本語配列)をレビューしていきます。
こんな方に向けて書いています
- 新品で買える唯一のバックリングスプリング式に興味がある方
- Unicomp UltraClassicを検討している方
- Unicomp UltraClassicを買えるサイトを知りたい方
Unicomp UltraClassic106(日本語配列)のレビュー
それではUnicompのUltraClassicのレビューからしていきます。
このキーボードは日本語配列ですが店や通販で売られておらず、個人で英語で書かれているUnicompのサイトで購入する必要があります。
以前はマジェスタッチシリーズを発売しているFILCOから国内正規販売されていましたが、残念ながら現在ではもう扱っていません。
そのため、英語で書かれているUnicompの公式サイトで購入して個人輸入をする必要があります。輸入とはいっても手続きとかは一切なく普通に通販で物を買うような感覚ですが、送料がめちゃくちゃ高いです。
実は今回はキーボード本体が約100ドルなのに対して、約140ドルというバカ高い送料を支払っています。
しかも、僕が購入したタイミングは1ドル150円だったので、合わせて合計約3万6千円ほどかかりました、、、
送料に関しても国際情勢によって左右されますが、キーボード本体よりも高い金額を覚悟しておきましょう。
ちなみに、なんかアメリカから来る段ボールって特有のにおいがあるんですよね。過去にアメリカ米軍の野戦戦闘食であるMREを購入した際にも段ボールが同じような匂いがしていました(笑)
臭くは無いのですが鼻に付くにおいで近くに段ボールを置いておくと不快です。
まあ、前置きはこれぐらいにして開封していきます。
段ボールを開封すると中には凄くシンプルなパッケージが現れます。
このパッケージを取り出してみました。
パッケージの横にはラベルがはられています。そして、箱がなぜかボロボロになっています。
このパッケージを開けるとようやくキーボードが見えてきます。
取り出すとこんな感じです。
本体は非常にごつく、迫力があります。
余白が大きいので同じフルサイズキーボードと比較しても、占有するスペースが大きいように感じます。
個人的にはテンキーレスの方が好きなのですが、日本語配列はフルサイズキーボードしか選べません。
追記:現在はMini Mシリーズで日本語配列のKTLも選べます。僕も狙ってます。
そして、写真では見えませんが触ってみると全体的に油分が付いていて、べたべたしています。おそらく金型から成形したプラスチックを取り外すための剥離剤かと思われます。
右上にはLEDインジケーターとその下に”Unicomp”とロゴが入っています。
スペースキーの下には謎のモールドがあります。
元々ボタンが付くために開いていた穴だったのですが、ボタンを付ける必要が無くなったので埋められているのが理由です。
次に横から見ると厚みが結構あることが分かりますね。
比較で手前に薄めのキーボードを置いていますが、そのキーボードの高さの2倍以上はあります。
厚みがあるのでパームレストが必須なのはもちろん、厚めのパームレストを使用する必要があります。(後述します)
裏側にはチルトスタンドが装備されています。
結構しっかりしているのですが無い方が使いやすいので、ほとんど使う機会はありません。
>>>キーボードのチルトスタンドってどれが一番良い!実は使わない方が快適!?
特に他に機能などはありませんので、これでキーボード本体の紹介は終了です。
なんか、全体的にアメリカンな雰囲気を感じる一品でしたね。
Unicomp UltraClassic106(日本語配列)の特徴
では、次にUnicomp UltraClassicの日本語配列の特徴を解説していきます。
このキーボードはベースとなっているmodelMが古いこともあって、現在のキーボードとは結構違う部分もあります。
今回購入したキーボードの特徴として、以下のようなことが挙げられます。
- バックリングスプリング式
- ステップスカルプチャー構造
- パームレストが限定される
- 本体が非常にデカいし重い
- 成形が甘い
- USB接続
これだけでは良く分からないものもあると思いますので、それぞれの特徴を詳しく解説していきます。
バックリングスプリング構造が採用されている
1つ目はバックリングスプリング構造が採用されているという特徴です。
やっぱりこの特徴がこのキーボードの最大の特徴であり最大の売りなので、この点に魅力を感じられない場合はこのキーボードを購入する価値はありません。
そんなバックリングスプリング方式の魅力は「麻薬的で打鍵感が良い!」という一言に尽きます。
この仕組みは一定の深さまで押し込むと「カチッ」とクリック感があるタイプですが、メカニカルキーボードの青軸とも若干違う打鍵感で唯一無二の感触を楽しめます。
バックリングスプリング式は「カチッ」っといった後に一気に沈み込むのに対して、青軸は沈み込まないという違いがあり、一気に沈み込む感覚が爽快で”打ち抜き感”を味わえます。
その打鍵感によってカルト的人気があり、オークションでも元の値段の数倍で取引されている物もあります。
海外では販売終了されたmodel Mの中古をオーバーホールして販売している会社があり、それもすぐに売れてしまうので人気が伺えます。
実際に僕は今まで41万円分ほどHHKBやリアルフォースなどの高級キーボードをたくさん購入してきましたが、それらを超えた打鍵感であると感じています。
しかし、打鍵感にステータスを全振りしているので、デメリットも結構大きいという特徴もあります。
少し例を挙げると打鍵感が70gとバカ重い(一般的なキー荷重は45g)、音がクソうるさい(青軸以上)、デカいという部分ですね。
バックリングスプリング構造のメリットやデメリットは解説したいことが多すぎて、他の記事でまとめてあります。
現在新品で購入できるのは今回レビューしているUnicomopのキーボードだけなので、上の記事の内容はそのまま当てはまります。
打鍵感の気持ち良さの理由についても解説していますので、是非ともご覧ください。
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往年の名機?バックリングスプリング式キーボードの仕組み、特徴や魅力を解説!
現在ではキーボードの構造と言えばメンブレン式やメカニカル式、静電容量無接点式などの物が主流です。 しかし、パソコン黎明期の2000年以前にはこれ以外にもいろいろな構造のキーボードがあったのです。 ...
バックリングスプリング式が採用されている!
ステップスカルプチャー構造
2つ目はステップスカルプチャー構造です。
ステップスカルプチャー構造はキーボードを横から見た際に中央の段を中心として上に向かうほどに湾曲している構造です。
この構造のおかげで、上の段をタイピングする際に必要な指の移動距離が小さくなり、それによって指の疲労を軽減できたりします。
>>>疲労軽減ならステップスカルプチャー構造のキーボードを選ぼう!
また、ステップスカルプチャー構造自体は数千円以上のキーボードに採用されている一般的な構造なのですが、このキーボードは一味違います。
最近のキーボードはキースイッチが付いている土台は平らになっており、キーキャップの形状によってステップスカルプチャー形状を実現しています。
しかし、このキーボードはキースイッチが付いている土台自体が曲がっているのです。それによって、現在のキーボードよりもさらに湾曲を大きくでき、指への負担がさらに小さい形状になっているのです。
ステップスカルプチャーの湾曲が豪快
ただし、バックリングスプリング構造はキー荷重が70gという現在ではありないようなキー荷重になっています。
現在のキーボードでは高くても60gなので、このキーボード全体でみると疲れます(笑)
また、大きい湾曲が逆にデメリットになってしまう部分もありますが、これに関しては次をご覧ください。
パームレストが限定される
3つ目はキーボードの厚みが原因で通常のパームレストでは高さが足りないということです。
高級キーボードのほとんどはキーストローク量を確保するために厚みがあり、使用する際にはパームレストが必須です。
>>>パームレストがいらないってマジ?疲労軽減効果やミス率を実験!
しかし、UltraClassicではそれらの高級キーボードよりもさらに厚みがあります。
僕はパームレストを色々持っていますが、僕が持っている範囲でもっとも厚みが丁度良いと感じたのがHyperXのパームレストでした。
このパームレストは厚みがあるので、ほとんどのキーボードからしたら厚みがありすぎて逆に使いづらいのですが、このキーボードとは相性が良いみたいですね。
僕はテンキーレスサイズを使っていますがフルサイズ版もあります
ちなみに、高さが足りないパームレストを使用する場合は、パームレストの下に本を置くことで解決します。
皆さんも良いパームレストが無かった際に真似してみて下さい。
パームレストは厚みがあるものを選ぶ必要がある
デカいし重い
4つ目はデカいし重いという点です。
このキーボードは前述の通り厚みがあり、本体も頑丈に作られているので大きくずっしりと重みがあります。
現在のキーボードと比較すると分かるのですが、キーボードの余白が大きかったりファンクションキーが離れていたりする部分が大型化に繋がっています。
左側はマジェスタッチコンバーチブル2、右側がUnicomp UltraClassicですが、同じファンクションキーが付いているキーボードにも関わらず3センチほど奥行きの差があります。
これが主に大きく感じる理由です。
また、日本語配列はフルサイズキーボードしか選べないというのも、デカくなる理由ですね。
前述の通り現在ではTKLの日本語配列も選べます
重量は約1.6kgとヘビー級ではありますが、特別重いわけではありません。
現在発売されているリアルフォースR3のフルサイズキーボードでも1.6kg(テンキーレスは1.3kg)なので、鉄板が入っていて頑丈なフルサイズキーボードの中では一般的と言えるでしょう。
その代わり物理的な耐久性は非常に高いですし、タイピングをしている際の安定感は抜群です。
恐らくこのキーボードを持ち運ぶことは無いでしょうし、デスクの上にスペースがある場合はそこまで本体の大きさは気にならないでしょう。
サイズがデカく重量も重い
成形が甘い
5つ目の特徴は本体の外装の成形が甘いということです。
UnicompのキーボードはIBMの時代から使われていた金型が使用されていますので、金型の劣化が進んできています。
プラスチックを成形するには金型に溶けたプラスチックを流し込むのですが、その金型が傷んでいると成形品にヒケが出てきてしまいます。
”ヒケ”というのは本来まっすぐになるはずの所が若干凹んでしまう現象で、不格好に見えてしまうという現象です。
見た目が命のプラモデルの場合は仕上がりを良くするために、パテを盛ってからやすりで削って表面を平らにしてから塗装をする場合もあります。
キーボードの機能には何の問題も無いのですが、個人差や個体によっては気になってしまう可能性もあります。
また、ゲート処理も雑です。
プラスチックはどんなものでもプラモデルのようにランナーと呼ばれる不必要な部分が生まれるので、ランナーと部品を切り離す必要があります。
その際に部品とランナーの境目をゲートと呼び、ゲートの跡を残さないようにするのがゲート処理という作業です。
しかし切り離し方が雑だと、ゲートが付いていた部分がえぐれてしまいます。
このキーボードの場合はそれぞれのキーの後ろ側にゲート跡がえぐれた跡があります。普段は別に気になりませんが、後ろから見ると結構目立ちます。
もちろん最上段のファンクションキーだけでなく、その他のすべてのキーのゲート跡がえぐれています。
これも機能には問題ありませんが、見た目があまりよくありませんね。
加えて謎の汚れも付いていました。
簡単に取れそうでしたが、擦っても表面のザラザラに入り込んで取れません。
黒の本体に白の汚れなので少し目立ってしまいますが、処理するのも面倒なので放置しています。
これらの要素が組み合わさって現在発売されているキーボードと比較すると、全体的に仕上げが汚く感じてしまいます。
まあ、アメリカ製品なので仕方ないと割り切ってこんなもんだと納得するか、プラモデルをしている方は各自で処理をしても良いと思います。面倒ですけど。
全体的に仕上げが甘い
USB接続
6つ目はUSBで接続できるということです。
これを見て「えっ?USB接続とか当たり前じゃないの?」と思うかもしれません。確かにそれはそうです。当たり前です。
しかし、このキーボードのもとになっているIBMのmodelMは80年代中頃のキーボードなので、もともとはPS/2接続という規格が使われていました。
恐らく昔からパソコンを使用していた方は見たことがある端子だと思います。この端子は2000年代には使われていましたが、現在ではほとんど見ませんね。
さすがにPS/2接続のままでは使いにくいので、最低限の部分は近代化されていることになります。
ちなみにですが、モデルによっては追加で3ドルほど払うとオプションで今でもPS/2接続バージョンも選べます。
接続方法は現在のキーボードと同じでUSB
印字が消えない
最後はキーキャップの印字は昇華印刷なので、印字が消えないという特徴があります。
昇華印刷というのはキーキャップにインクを染み込ませる方法で、普通に使っているのであれば消えません。
安価なキーボードだと長期間使用していると印字が消えてしまいますが、このキーボードは表面が削られない限り大丈夫です。
昇華印刷で印字が消えることはない
以上がUnicomp UltraClassic日本語配列の特徴でした。
昔のキーボードをベースにしているだけあって少し古さを感じる部分もありますが、バックリングスプリング構造のデメリットと合わせて味として楽しめる方は大丈夫です。
Unicomp UltraClassic106を購入できるサイト
上でちらっと触れましたが、Unicompのキーボードを購入しようとすると海外のUnicompの公式サイトで購入する必要があります。
>>>Unicomp UltraClassic 106(Japanese)
ある程度の英語ができる方はそこまで難しい英語では無いのでだいたいわかると思いますが、もし英語が苦手な場合はブラウザの翻訳機能を使用するとそこそこの精度で日本語訳してくれます。
そして、購入するには会員登録をする必要があります。
注意点は会員登録をする際に住所を求められるのですが、英語だと住所の書き方が逆になります。
日本語は県名から初めて番地で終わりますが、海外式だと番地から始まって国名で終わります。
具体的なことは「英語 住所 書き方」とかで検索すると載っているサイトがあるので、そちらを参考にしてみて下さい。
もし、ハードルが高いようであればフリマサイトやオークションで”稀に”出品されているので、そちらを探してみても良いと思います。
ただしほとんど出品されていないので、結局公式サイトで買うしかないと思います。
Unicompサイトで直接購入するのが現実的な入手方法
支払い価格
支払い価格は結構変動してきます。
レビューでも少し触れましたが、このキーボードを購入するにはキーボード本体の価格と送料が必要です。
僕の場合はキーボード本体が105ドルでしたが、送料は約140ドルかかりました。
これに現在のレートを掛けたのが支払い価格です。
参考までに僕が購入した際のレートが1ドル150円程度ということで、全部で3万6千円ほどかかりました。
また、変動するのはレートだけではありません。
送料も世界情勢によっても変化してきます。今回は140ドルでしたが、過去は70ドル前後だったという話もあるので、やっぱり状況によって変わってくるとしか言いようがありません。
支払いはPaypalで行いますので、すでにアカウントを作成している場合は比較的簡単にできます。
完全にマニア向けキーボード
今回はUnicompのUltraClassic106(日本語配列)のレビューをしてきました。
このキーボードは本来淘汰されるはずだったバックリングスプリング構造を現在でも新品で体験できるという点が素晴らしいと感じています。
これはデメリットや仕上げの粗さ、本体と送料の高さを加味しても十分にその価値があると感じています。
特に打鍵感を重視している方は是非とも試していただきたいですね。
僕も打鍵感を重視しているタイプでHHKBやリアルフォース、メカニカルキーボードなどを試しており、今まではHHKBの打鍵感が最強と思っていました。
しかし、このキーボードは僕の中の打鍵感ランキングを更新したのです。打鍵感部門では41万円分のキーボードのトップに君臨したということですね。
それぐらい打鍵感が快感でした。(総合的にはHHKBが圧勝ですが)
反対にキーボードマニアでも無くバックリングスプリング構造の打鍵感に興味が無い場合は、高い割にデメリットだらけの古臭いキーボードです。
ロマンを感じない場合は買う意味は無いでしょう。
このように打鍵感を重視するかしないかによって好き嫌いが分かれるキーボードと言えるでしょう。
IBMが作った唯一無二で官能的な打鍵感を味わってみたい方は高いお金お出す価値があるので、是非とも購入してみて下さい!
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