
静電容量無接点式が採用されているHHKBやリアルフォースは”快感を感じる打鍵感”と評価されています。
非常にこだわられている機能と相まってタイピングをたくさんする方に愛用者が多いキーボードです。
しかも、メカニカル式と比較しても「静電容量無接点方式の方が気持ちが良い!」という方が結構います。
静電容量無接点方式は高いですが、メカニカルキーボードでも3万円クラスの物がありますので、値段は関係ありません。

何故メカニカル式のキーボードよりも打鍵感が良いと感じるのでしょうか?
これは思い込みだけではなく、きちんとした理由があるのです。
今回は静電容量無接点方式の打鍵感が良いと感じる理由を解説していきます。
打鍵感は好みにも左右されますので傾向として捉えて下さい。また、同一機種でもキー荷重の違いや、静音仕様だと若干打鍵感が変化する場合もあります。
こんな方に向けて書いています
- 静電容量無接点の打鍵感に興味がある方
- 静電容量無接点を検討している方

静電容量無接点方式=気持ち良いは嘘
この話をするにあたって最初にして置く必要があるのが、「静電容量無接点式だから気持ち良い訳ではない」ということです。
静電容量無接点方式はキーが下がっていることを検知する部分で、反発を生み出している部分を指すわけではありません
そもそも静電容量無接点方式って何?
この記事では原理を詳しく解説しませんが、静電容量無接点方式は静電容量の変化によってキーの深さを計測しています。
下の画像はHHKBのサイトに掲載されているキースイッチ部分の断面図ですが、円錐スプリング(コニックリング)が入っています。
一見、円錐スプリング(コニックリング)で反発していると思いがちですがこれは打鍵感に影響しません。
このスプリングは非常に柔らかく、キーが下がるとキー荷重にほとんど影響せずに変形します。
これが変形すると静電容量が変化し、基盤に付いている静電容量を検知するセンサが「入力された」と判断します。
まあ、まとめると基盤に付いている静電容量を検知するセンサと、打鍵感にはほとんど影響がないが縮むことで静電容量が変化するスプリングの2つが静電容量無接点方式です。

静電容量無接点方式自体の詳しい原理と仕組みに関して知りたい場合はコチラもご覧ください。
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【機械工が解説】静電容量無接点キーボードの仕組みや特徴は?メリット・デメリットを解説!
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打鍵感が生み出されている理由
では、次に気になってくるのが「どうやって打鍵感が生み出されているのか?」というポイントです。
事実として現在発売されているリアルフォースとHHKBは「打鍵感が気持ち良い」と評価されています。
その打鍵感はどこから来ているのでしょうか?
実は打鍵感を作り出しているのはラバーカップなのです。
ただし、”メチャクチャ”こだわられた最高品質のラバーカップです。
ラバーカップがコニックリングの上に被せられており、反発を生み出しているというわけですね。
現行の静電容量無接点方式はラバーカップで反発している
ラバーカップ式と言えばメンブレン式のイメージですが、実はメンブレン式と言いうのもキーの入力を認識する部分の仕組みを指す言葉です。

そのため、ラバーカップの有無ではなくメンブレンシートが採用されていたらメンブレン式です。
▼メンブレンシート▼

ラバーカップが無くてもメンブレンシートに触れると反応しますので、この状態でも入力は出来ます。
そのため、メンブレン式でも別の方法で反発力を生み出している物もあります。
また、「メンブレン式は打鍵感が良くない」と言われているのには理由があります。
それは打鍵感が追求されていないからです。
▼千円キーボードのラバーカップ▼

安価なキーボードを購入する人は打鍵感を求めておらず、「とりあえず文字を入力出来たら良い」という考えでキーボードを選びます。

そんなキーボードの場合はコストアップしてまで打鍵感を追求するはずがありません。
対して静電容量無接点を採用するようなキーボードは例外なく細部までこだわられています。
それは打鍵感も例外ではなく、本来なら必要ない打鍵感がコストアップしてでも追求されているのです。
また、ラバーカップが採用されているのも静音化に有利なのと、打鍵感の伸びしろが大きいという理由があります。
実は打鍵感を突き詰めるはラバーカップの方が気持ち良い打鍵感を実現できます!

このおかげで打鍵感が良いと言われているメカニカル式よりも、さらに高い評価を打鍵感で得られているのです。
ラバーカップは拘ることでかなり化ける!
まとめると、静電容量無接点方式が採用されるようなこだわりキーボードであるから、打鍵感が良いと言った方が正しいのです。

静電容量無接点方式=気持ち良い
静電容量無接点方式が採用されるようなこだわりキーボードだから気持ち良い
打鍵感が良いと感じる理由

それでは、次に何故静電容量無接点方式が気持ち良いのかを解説していきます。

まず、人が「気持ち良い」と感じる打鍵感には2つの条件が必要です。
- キーの”キレ”
- 勝手に底付き
2つと言ってもキーの”キレ”の方が大事ですし、”勝手に底付き”しても”キレ”が無いと台無しになります。
逆に”勝手に底付き”しなくても”キレ”があったらそれなりに気持ち良い打鍵感になるのです。
とはいっても、”キレ”とか”勝手に底付き”とか言われても正直分かりません(笑)
フィーリングなので難しい部分もありますが、それぞれを詳しく解説していきます!

キーの”キレ”とは?
まずは最も大事なキーの”キレ”について解説していきます。
”キレを”一言で表すとこんな感じです。
キーが底付きする感触の分かりやすさ
まあ、これでも分からないと思うので具体例を用いて解説していきます。
安価なメンブレンキーボードの打鍵感が不評な理由は”キレ”が無いからです。
メンブレン式はキーを底付きした際に「ブニュ」という感覚がありますよね?
「ブニュ」という感触こそが”キレ”が無いということであり、どこが底付きなのか分かりにくなります。
底付きが分かりにくいと3つの困ることがあります。
- 力の抜きどころが分かりにくい
- エネルギーが吸収されて反発に利用できない
- シンプルに気持ち良くない
気持ち良くないのはもちろんですが、”キレ”が無いと疲労を感じる原因でもあります。
底付きが分からないと力を抜くタイミングが分かりくく、底付きしてもさらに押し込んでしまうのです。
これは無駄に力を消耗することになります。
また、キーを押して次のキーに行く際に、反作用を利用して手を動かすと効率よく動かせます。
しかし、”キレ”が無いと「ブニュ」という感触の際に反作用に使われるはずだった力が吸収されてしまいます。
これによって反発が利用できず、タイピングスピードが落ちて力を消耗する原因にもなります。

対してメカニカルキーボードは底付きした際に、「カンッ」という底面と当たった音と指先にもその衝撃が伝わってくるのが特徴です。これこそが”キレ”があるという状態です。
指先に伝わってくる衝撃と同時に力を抜くのは無意識にできますし、反作用もゴムに吸収されずに効率的に利用できます。
そのため、軽やかにタイピングが出来るようになり、タイピングスピード向上と疲労軽減効果が得られることになります。
これがメカニカル式の打鍵感が良く、疲れにくいと言われている理由なのです。

静電容量無接点方式はラバーカップ式ですが”キレ”を感じられるように対策がされています。
ラバーカップ式で”キレ”を出そうとするとコストアップ(部品の増加)しますが、静電容量無接点方式はそこまでこだわっているということです。
ただし、ラバーカップ式のメンブレン式でもこの対策を取れば、打鍵感を良くすることも可能です。
実際に過去に発売されていた高めのメンブレン式は”キレ”を感じさせる打鍵感で名機と呼ばれたキーボードもあります。
静電容量無接点方式は”キレ”を感じる打鍵感である
”勝手に底付き”とは?
次に大事な”勝手に底付き”について解説していきます。
1つ目の”キレ”があることを満たしているとそれなりに良くなりますが、”勝手に底付き”も同時に満たしているとさらに気持ち良い打鍵感になります。
これをを一言で表すとこんな感じです。
力の山を越えたら勝手に底付きしてる
イメージ的には一定以上の荷重を加えると、一気に荷重が抜けてタクタイル感が指に伝わると共に底までストンと下がっていく感触です。
実はこれがラバーカップ特有の打鍵感です。
安価なメンブレン式キーボードも同様で、一定以上の力を加えた際にタクタイル感と共に底までストンと下がる感触があります。

ちなみにメカニカル式が静電容量無接点方式を超えられないのは”キレ”はあっても”勝手に底付き”はしないからです。
これはグラフをご覧頂くと分かりやすいとおもいます。
下のグラフはリアルフォースの打鍵感を表しているグラフです。

このグラフは縦軸がキー荷重、横軸がキーの押し込み量です。
リアルフォースは押し込み量が少ない段階で最大荷重が発生して、後は底打ちまでなだらかに下がるのが分かると思います。
この特性のおかげで勝手に底付きするわけです。
実はこのような特性はメカニカルキーボードでは再現できないのです。
メカニカルキーボードの反発はバネが生み出しています。

皆さんはばねの特性として「フックの法則」というのを習ったことがあると思います。
これはバネの反発力は押した距離に比例するという法則です。

そうすると赤軸はこのような打鍵感の特性になります。
赤い線を見て欲しいのですが、押し込むごとに反発力が強くなっていますよね!

クリック感が無い赤軸は一切の起伏が無く、底打ちまでなだらかに上がっていきます。

では、クリック感がある青軸の場合はどうなるのでしょうか?
こちらも赤い線を見て頂きたいです。

クリック感を表す山が一部ありますが、全体的に見ると距離に比例して右肩上がりのグラフになっています。
メカニカル式はバネの特性によって、底付きに近づくにつれて加える力を増やす必要があります。
そのため”勝手に底付き”できずに、意識的に底付きする必要があるのです。
つまり、ラバーカップ式であるからこそメカニカル式を超えられるということです。
加えて、同じキー荷重でも静電容量無接点方式の方が疲れにくいというメリットもあります。
一般的にキー荷重は反応ポイントまで押すのに必要な荷重です。
そのため、メカニカルは底付きまで押すとなると、キー荷重よりもかなり力が必要になります。

しかし、ラバーカップは一度山を越えると後は下がっていくので、それ以上キー荷重が上がらないのです。
つまり静電容量無接点方式の45gはメカニカル赤軸の45gよりも底付きに必要な力が少ないのです。

静電容量無接点方式は”勝手に底付き”も兼ね備えている
最後にまとめると静電容量無接点方式のラバーカップは両方が揃っているというわけです。
そして、安価なキーボードには”キレ”がなく、メカニカルキーボードには”キレ”はあるが”勝手に底付き”はありません。

これによって両方の条件を満たしている静電容量無接点方式のラバーカップがメカニカル式よりも評価が高いと言えるのです。
静電容量無接点式は上品
よく静電容量無接点方式は「上品でしっとりしていて、吸い付くような打鍵感」と言われます。
実はメンブレン式にも”キレ”と”勝手に底付き”を兼ね備えた名機がありますが、実際に比べて打ってみると「上品なしっとり感」はありません。
というのも、メンブレン式は底付きしないと入力しないので、絶対に底付きさせる必要があります。
途中で止まらないように勢いを付ける必要があり、そのために力の山が大きいのです。
先ほど使用したリアルフォースのキー荷重の画像を使用して説明すると、キー荷重の最大値を大きくする必要があるということですね。

キーを押す際に山を越える必要があるので、山を越えるまで力をタメる時間が必要です。
その後もキーの最大値と最小値の差が大きいので、指に「あ、今キー荷重の山を越えたな」と明確に伝わってくるのです。
これはメンブレン式共通なので、安価なキーボードやノートパソコンのキーボードも同じような傾向があります。

しかし、静電容量無接点方式は底付きしなくても反応するので、メンブレンのような勢いを付ける必要がありません。
キー荷重の最大値を低くでき、キー荷重の最大値から最小値に向かうまでがなだらかです。
力の起伏が小さくなることによって「力をタメる時間」や「指に伝わる力の変化」が小さくなります。
よって、「上質でなめらか」で吸い付くような打鍵感を実現しているのです。
静電容量無接点方式だから滑らかな打鍵感になる
ちなみに、かつて富士通はリベルタッチという高級メンブレンを出していました。
リベルタッチは独特の構造によって弱点を克服しているので、メンブレンながらも非常に上質な滑らかな打鍵感です。

しかし、打鍵感は静電容量無接点方式レベルかそれ以上に良いのに、”メンブレン式”というのが良くなかったのか現在は生産終了しています。
在庫品で新品は手に入りますが、プレミア価格でアホみたいに高いので正直オススメはしません。
リアルフォースとHHKBの違い

静電容量無接点方式と言えばリアルフォースとHHKBが有名です。
これは両方とも静電容量無接点スイッチ部分は同じで、ともにラバーカップが採用されています。
基本部分が同じなので打鍵感が似ているのは当然です。
しかし、細かく打ち比べると異なる部分もあります。
その違いはHHKBにわずかな”ザラツキ”を感じるということです。
キーを押し下げるとわずかに”ザラザラ”という感触が指に伝わってきますし、音も少しざらついているようなような音もします。
これが打鍵感のアクセントになって他のキーボードには無い病みつきの打鍵感を演出しているのです。
リアルフォースこれが無く比較的素直な打鍵感です。
別にこれは劣っているわけでは無く、ザラツキが無い分気持ち良く感じる条件である”勝手に底付き”がより鮮明に感じられます。
HHKBはザラツキの摩擦で”勝手に底付き”する感覚が薄れてしまうんですよね。
それに、リアルフォースの”非”静音モデルは音という制約が無い分打鍵感に全振りされています。

また、リアルフォースの静音モデルはHHKBの静音モデルよりも静かです。最も静かなモデルが欲しい場合はリアルフォースの静音モデルがおすすめです。
>>>リアルフォースの静音は最高レベルで図書館でも大丈夫!?違いを両方持ってる僕が解説!
このように2つの違いで優劣が付くのではなく、好みの違いが分かれるだけです。

静音仕様やキー荷重によって打鍵感は当然変化します
この2つの違いについては別の記事で詳しく解説しています。迷っている方は是非ともご覧ください。
▼HHKBとリアルフォースの違いはコチラ▼
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静電容量無接点方式は気持ち良い!
今回は静電容量無接点方式が打鍵感を良いと感じる理由を解説してきました。
静電容量無接点方式だから気持ち良いのではなく、静電容量無接点方式が採用されるほどのこだわりキーボードだから気持ち良いということが分かって頂けたと思います。

また、メカニカルキーボードよりも打鍵感が良いと言われている理由も分かって頂けたと思います。
そんなこだわりの静電容量無接点方式キーボードを選んでみるのも良いと思います!
メカニカルキーボードと静電容量無接点方式の打鍵感以外の違いについて知りたい方はこちらも参考になると思います。
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